約 3,982,510 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4345.html
『ゆっくり次世代燃料実験車』 5KB 愛で 考証 現代 続き物です。失礼します この作品はanko4296 『ゆっくり次世代燃料』の続きとなっております。 宜しければ、そちらを先に読まれるとより楽しめる・・・ か、どうかは「わからにゃいよ~!?」 そぅ、わからない。僕が開発した、ゆっくりを原料に使用する『ゆっくりバイオエタノール』を 車に投入してみたが、まったくエンジンがかからない。 成分分析の結果も申し分無いはずなのに、ウンともスンとも言わない。 「うんうんするよ~、すんぐでるよ~♪ (ぐちゃ) ゆべぇっ!!」 ゆっくりがウンとかスンとか言っても仕方ないので踏み潰しておいた。 気分転換にと 農園へ来てみたが、苦しむゆっくりにも見慣れてしまって、 一匹潰してみたところで、あまりスッキリ出来るものでもない。 ほら、いつもと同じような、赤白、黒白、黒白、赤白、黒白、紫、赤白、黒白・・・ ん?紫?ぱちゅりー種とは珍しい。裏山から近いといっても、ぱちゅりーにとっては それなりの距離だろうに。 気になり、少し様子をうががってみると行動も少し珍しい。 これだけの野菜を前にして、むーしゃ、むーしゃ、するでもなく、たださめざめと泣いている。 僕は そっとぱちゅりーに近づき、後ろから捕まえ、持ち上げた。 「むきゅ!? に、にんげんさん・・・」 少し驚いたようだったが、えれえれする事もなく、また、うつむき泣き始めてしまった。 人に捕まっても 「くそにんげんっ!!」と罵る事もなく、暴れないコイツを見て、 力関係の判る、割と賢い個体なのかと思った・・・が、 「むきゅ・・・、ぐすっ にんげんさんは・・・ ずるいわ・・・ ひっく、ひとり・・・じめ・・・」 うん、やっぱりゆっくりか、”おやさいさんの はえてくる ゆっくりぷれいすを ひとりじめする げすにんげんは せいっさいっするよっ!!”とか言い出しちゃうか。 コイツもエタノールの原料かなー? 「むきゅ! おやさいさんを そだてるちからを ひとりじめするなんて、ずるいわっ!」 今度はこっちが驚かされた。まさか、野生のゆっくりで、”野菜は勝手に生える”ものではなく、 ”野菜は育てる”ものという認識の個体が居るなんて。 僕は、ぱちゅりーの話しを詳しく聞いてみる事にした。ぱちゅりーはすでに”かくごっかんりょうっ!” しているみたいで、すんなりと話してくれた。 「ぱちぇはぱちぇようらのおやまさんでおさをしていたのぱちぇのおかあさんのぱちぇもぱちぇの おかあさんのおかあさんのぱちぇもおさをしていただいだいつづく・・・(びしっ!)むぎゅ!!」 ゆっくりは呼吸しないからってノンブレスで喋るな。ゆっくりの名の通りゆっくり喋れ。 もともと話し好きだったんだろう、ぱちゅりーの話しに、チョップでツッコミをいれた。 ゆっくり喋って貰っても、意味を理解するのに多少時間が懸かったが、内容を要約すると・・・ ぱちゅりーは裏山に住む群れの長だった。 祖母ぱちゅりー、母ぱちゅりー、ぱちゅりーと代々続く長の家系だった。 それぞれ賢い個体だったらしく、祖母ぱちゅりーはゆっくりしていない人間の近くに 野菜の生える”ゆっくりぷれいす”があり、ゆっくりしている自分達の近くに ”ゆっくりぷれいす”が出来ない事を疑問に思ったそうだ。 母ぱちゅりーは野菜が生える”ゆっくりぷれいす”も人間が居なくなると 野菜が生えなくなる事に気が付いたそうだ。 「むきゅ、それでね、ぱちぇは きづいたの。おやさいさんは にんげんさんが そだてていることに!」 ゆっくりしていない人間が野菜を育てられるなら、ゆっくりしているこの群れの皆なら、 どんな巨大な”ゆっくりぷれいす”が出来るのだろうと、気付いた時は喜んだそうだ。 「でもね、ぱちぇのいうことを きいてくれた ゆっくりは むれの はんぶんのはんぶんくらいだったわ」 ふむ、長の言葉といえ、本能に逆らう意見を聞けるものは多くないだろうな。 「すくない ゆっくりでも ぱちぇたちは がんばったの・・・」 「でも、いしさんがいっぱいで。ふかふかのつちさんにならなくて・・・」 「おやさいさんも はえてこなくて、みんなが ぱちぇのこと うそつきだって・・・」 「ぱちぇ、もう、おさじゃないって。むれから でてけっ!って・・・ むきゅ・・・ ぐすっ・・・」 それで群れから追い出されて、途方にくれて農園の横で泣いていた訳か。 「ぱちぇに・・・ むれのみんなを せっとく する かりっすまっ!があれば・・・」 「せめて、にんげんさんの おやさいさんをそだてる ”すぃー”があれば・・・」 ん?”すぃー”って農園横にあるトラクターの事か? 「にんげんさん、ぱちぇは もぅ、どうなっても いいわ。ただ、さいごの おねがいがきけるなら・・・」 「あの ”すぃー”に いちど のってみたいわ。むきゅ・・・」 まぁ、乗せるのはいいけど、動かせないぞ? このトラクターも『ゆっくりバイオエタノール』入れたら、エンジン懸からなくなったから。 そう思いつつ、ぱちゅりーをトラクターに乗せると・・・ ぶるんっ! どっどっどっ、どどどどどどっ! 「むっきょぉぉおお! すごいわっ!すごいわっ! ぱちぇ かぜになってるわぁあああ!」 えー、どぼぢで動くんですかー?手足ないのにどうやって操縦してるんすかー? エンジン音が平仮名なのはそういう事ですかー? あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 『ゆっくりを原料にした燃料を入れたと思ったら、ゆっくり用のすぃーになっていた。』 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが、今 ぱちゅりーが超スピードでトラクターを運転している。 頭がどうにかなりそうだった… 「っむっきゃぁああ!! ぱちぇは とうげの ”どりふとくぃ~ん” よ!」 やめて下さい、ここは峠じゃありません、農園です。トラクターでドリフトもしないで下さい。 「っむっきゅぅぅぅ~ん!! なんゆんたりとも ぱちぇのまえは はしらせないわぁああ!!」 ハンドル持つと性格変わるんですか?、てか持ててないでしょうが、ハンドル。 なんとかぱちゅりーを落ち着かせ、トラクターから降ろす。 「むきゅ・・・ ぱちぇは だいっまんぞくっ よ・・・。もぅ、おもいのこすことは ないわ」 「にんげんさん、ありがとう。ひとおもいに、やってちょうだい・・・」 ―――――――――――――――――――― 僕はその日、朝から機嫌が悪かったんだ。『ゆっくりバイオエタノール』を入れてエンジンの 懸からなくなった実験車 第一号は僕の愛車だったんだから。 その後、農園のトラクターもダメにしてしまった。まさか、ゆっくりしか運転出来なくなってしまうとはね。 僕はとある製油工場の一研究員。重役でも何でもないが、通勤の車には専属ドライバーが居る。 カーブをドリフトでまわるクセがあるが、僕より運転のうまいドライバーの帽子には 金色のバッチが光っている。
https://w.atwiki.jp/sysd/pages/4056.html
マーレエンジンコンポーネンツジャパン 【商号履歴】 マーレエンジンコンポーネンツジャパン株式会社(2005年~) マーレイズミ株式会社(2003年~2005年) イズミ工業株式会社(1988年~2003年) 泉自動車工業株式会社(1938年2月11日~1988年) 【株式上場履歴】 <店頭> 年 月 日~2002年8月28日(民事再生法適用申請) 【合併履歴】 2006年 月 日 株式会社山形泉 2006年 月 日 泉平田精機株式会社 【沿革】 1923年 泉自動車製作所を創業 1938年 埼玉県大宮市に泉自動車工業株式会社を設立(資本金45万円) 1965年 埼玉県川越市に川越工場を設立 1968年 マーレ社と技術提携 1970年 福島県にシリンダライナ(クロマードライナ)の専用工場として泉平田精機株式会社を設立 1972年 タイにマーレエンジンコンポーネンツ(タイランド)株式会社(旧タイ国泉ピストン製造株式会社)を設立 1974年 山形県鶴岡市に鶴岡工場を設立 1976年 山形県西村山郡に株式会社山形泉を設立 1988年 イズミ工業株式会社に社名変更 1990年 インドネシアにアストラオトパーツ社(旧フェデラルモーター社)との合弁によりPTフェデラルイズミ製造を設立 1992年 埼玉県桶川市にテクニカルセンターを設立 1993年 埼玉県桶川市に桶川工場を設立 1994年 中国に重慶長江活塞工業股分限公司との合弁によりマーレエンジンコンポーネンツ(重慶)有限公司(旧重慶長江イズミピストン有限公司)を設立 1995年 TPM優秀賞受賞 1997年 TPM優秀継続賞受賞 1998年 マーレ社に第三者割当増資 1999年 QS-9000認証取得、マーレ社に第三者割当増資 中国にマーレ社との合弁によりマーレエンジンコンポーネンツ(営口)有限公司(旧マーレ・イズミ(遼寧)ピストン有限公司)設立 2001年 桶川工場を閉鎖し、鶴岡工場に生産拠点を集約 2003年 マーレ社に第三者割当増資(資本金12億5千万円)、社名をマーレイズミ株式会社に変更(英文名 MAHLE Izumi Corporation) 2005年 ISO/TS16949認証取得、社名をマーレエンジンコンポーネンツジャパン株式会社に変更(英文名 MAHLE Engine Components Japan Corporation (MECJ) ) 2006年 ISO14001認証取得、株式会社山形泉、泉平田精機株式会社の 2社を吸収合併、西川工場を閉鎖
https://w.atwiki.jp/riku_ace/pages/40.html
【作品】バンプレストオリジナル 【機体】ヒュッケバインMk-Ⅱ 【パイロット】 ブルックリン・ラックフィールド 【アビリティ】 G・ウォール 【サポート】 G・インパクトキャノン 【発動条件】 プレイヤーが大ダメージを受けたとき 装甲C ダッシュB バーニアB 旋回A 射撃 フォトンライフル 格闘 ビームソード(後半:シシオウブレード) シフト□ バルカン(ミサイル迎撃) シフト△ G・ウォール(バリア) シフト○ チャクラム・シューター シフト× G・インパクトキャノン(発射時自機固定) シフトR1 なし シフトR2 なし ○□ 斬撃→突き ○○□ 斬撃→斬撃→ライフル ○○○□ 斬撃→斬撃→斬撃→居合い斬り ○○○○ 斬撃→斬撃→斬撃→斬撃
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1552.html
217 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 40 10 ID kVeCnTh+ 昼休みを告げるチャイムが鳴り、教室の空気は一気に弛緩した。 教卓に立っていた教師が去ると、クラスメイト達は弁当を片手にそれぞれのグループで集まり始める。それから、各々が楽しい昼食の時間を過ごす。いつも通りの昼の光景だった。 そんな中、弁当を持参していない私はひとり購買部へと赴く。 教室のドアを開けると、冷気を帯びた空気が室内へ流れ込んできた。一歩先は別世界のように冷え切っている。近くで弁当箱を広げていた女子が非難するように見てくるので、慌てて後ろ手でドアを閉めた。 廊下に出ると、教室の暖房に慣れていた身体が一瞬で粟立った。吐いた息も白い。 そこで私は今朝のニュース番組で、今日は今年一番の冷え込みになります、と女性アナウンサーが言っていたのを思い出した。 昔から、寒いのはあまり得意じゃない。私は両の手で身体を擦りながら、廊下の温度へ適応させるようにゆっくり歩いて行く。 私の横を男子生徒が二人駆けて行った。方向からして、同じ購買部を目指しているのだろう。 元気だなあ、と私は若い子を見て微笑む老人のような気持ちになった。 我が校の購買部は公立学校にしては珍しく数や種類もそれなりに豊富なので、今のようにゆったりと歩いていても、買いそびれるなんてことはまずなかった。 なので、三年生による売買ラッシュを嫌う私はゆっくりと歩いて行くのが常であった。 賑わっている別クラスの教室を横目で眺めながら、のんびりと購買部を目指して行く。 購買部に着いた。いつものように混み合っている部内に三年生の姿は既に無く、二年生と一年生がレジの前に、何重にも折り返した長い列を作っていた。 少し、ゆっくりし過ぎたみたいだ。私はうんざりする。 行き遅れすぎてしまうと、目の前のような、主に二年生による第二波がきてしまい、遊園地よろしく長蛇の列が出来る。混雑の原因としてはやはり、レジがひとつしかないからだろう。 その上、レジは入口付近に設けられているため、部内の商品を買うためには嫌でもこの人工運河を踏破しなくてはならない。 しかたがない、と私は面倒くさそうに息を吐くと、列に割り込んで行った。 218 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 41 12 ID kVeCnTh+ 右手で列を切り裂くようにして中を進んで行く。身体をぎゅうぎゅうと押され息苦しい、窒息しそうだ。 道程、男子生徒が迷惑そうに私を睨み舌打ちをしてきたので、すいませんと謝罪する。なんだか割り込みをしているみたいで、もの凄く申し訳ない気持ちになってくる。早くレジを増設して欲しいな、と私は人波に揉まれながら思った。 元々人込みが苦手な私は、人工運河を渡り切った時には、もうぐったりとしてしまった。一息ついてから、ふらふらとした足取りで菓子パンコーナーを目指す。 昼食にはいつも菓子パンかサンドイッチを購入していた。二つとも数だけは豊富なので売り切ることがないからだ。 今日もそのはずだった。 しかし道中、視界の隅に何かを捉え、思わず足が止まった。余分に進めていた右足を一歩下げる。 そこは、惣菜パンが売っているコーナーだった。惣菜パンコーナーは様々な商品が置いてある購買部でも最も人気がある場所だ。 先程、私は購買部では買いそびれることはないと言ったが、人気がある商品に関しては例外だった。 購買部は一階にある。校舎は四階建てで上から、一年、二年、三年と続くため、必然的に階下にいる三年生達に地の利があり、人気がある商品についてはさっさと買われていってしまう。 我が校は厳格な年功序列制度を採っているのである。 なので、私のような二年生はいつも中堅の商品しか買えない。一年生にしてはそれこそ余り物のような物しか買えないから悲惨だ。 だから、その惣菜パンコーナーにひとつだけ、学内で不動のナンバーワン人気を誇るカレーパンがひとつだけ残っているのは、随分と珍しいことだった。 いつもなら真っ先に無くなってしまうのに、どうしてか今日はひとつだけ残っている。 私は、ぽつんと誰かの手に取られるのを待っているそれをまじまじと眺める。 昔、一度だけ斎藤ヨシヱに頼んでこのカレーパンを購入して貰ったことがあった。その時は、人気のあるミュージシャンの新譜でも聞くような、そんな軽い気持ちで食べたのだが、正直あの時の衝撃は今でも忘れられない。 それから、何度かカレーパンを狙って三年生達と競ってみたりしたが、結局買えたことは一度もなかった。 219 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 42 27 ID kVeCnTh+ 次に食べられるのは進級してからだと思っていたけれど、意外とその時は早かったみたいだ。どちらにしろ、取らない訳にはいかない。 今日はついてるなあ、と私はカレーパンに手を伸ばした。 しかし、その伸ばした手は、突然現れた横合いの手に掴まれた。 私は驚いて、反射的に手を掴んだ人物へと視線を滑らせる。そして、さらに驚くことになった。 腕を掴んだのは、恐ろしい風体の女子生徒だった。軽く巻いた髪は金色に染め上げており、厳つい形をしたシルバーピアスが所狭しと耳を飾っている。 身長は女子にしてはかなり高く、平均的な男子生徒の私と大して変わらなかった。服の上からでもわかるプロポーションの良さが、やけに目につく。 私は突然の出来事に困惑してしまった。 彼女とは面識がない上に、その、私を見る、金色の髪とは対照的な真っ黒な瞳に、明らかに憤怒を感じるからだ。 その瞳は、そこらの野良犬ぐらいなら簡単に殺せそうなほど強いものだった。 自然と腰が引けてしまう。 彼女が怒っているのは一目でわかった。いつもの私なら何故怒っているのかが分からず、小一時間は悩んでしまうものだが、その日は運よく直ぐに彼女の怒りの原因を理解出来た。 私は柔和な笑顔で、彼女に言う。 「これ、食べたいのならどうぞ。私はそこのメロンパンでいいんで」 私のほうが早かったけれど、そんな目で見られては仕方ない。こういう時は女性に譲るのが紳士というものだろう。 空いた手でカレーパンを薦める。 しかし、金髪の彼女はそんなカレーパンには一瞥もくれずに、まだ私のことを睨んでいた。 カレーパンではないのだろうか。途端に不安になる。 その時だった。漸く、金髪の彼女が口を開いた。 「お前、鳥島タロウだな」 突然発したその声は、かすれたようなハスキーな声質だった。 私は軽く頷いて肯定する。 「ちょっと来い」 そう言って彼女はぐいぐいと私を引っ張ろうとした。 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」 慌てて抵抗しようとするが、彼女の勢いはこれっぽっちも止まらない。女子とは思えない凄い力だった。彼女の中指についている指輪が手首に刺さって非常に痛い。 220 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 43 40 ID kVeCnTh+ 最初こそ踏ん張ったりして抵抗してみたりした私だが、それが無意味だとわかると、さっさと諦めて彼女のなすがままになった。無駄な抵抗こそが一番の無駄なのは知っている。私はずるずると引っ張られていく。 彼女に連れ去られる途中、少し驚くことが起きた。 レジ前に形成されていたあの人工運河が、金髪の彼女が通ろうとした途端に、蜘蛛の子を散らしたように真っ二つに割れたのだ。 みんな、私同様に彼女が恐いのだろう。 昔、“十戒”という映画で主人公のモーセが海を割り、信者を連れて進んで行くシーンを見たことがあったが、今がちょうどそんな感じだった。 私達は割れた海の中を進んで行く。 左右からひそひそ声がサラウンドのように聞こえてくる。金髪の彼女には恐怖を、私には憐憫の念を帯びた視線をそれぞれ送ってくる。 道中、先程私のことを睨んでいた男子生徒が目に入った。さっきの不快感丸だしの目とは打って変わって、気の毒そうな視線を私に送ってきた。 それを眺めながら、私は金髪の彼女に拉致されていった。 連れて来られたのは、体育館近くに設けられている自動販売機群の前だった。 夏ならともかく、冬場で此処を利用する生徒は少ない。校舎内にも自販機があるからだ。 そのためか、幸か不幸かはわからないが、この場には私と金髪の彼女しか居なかった。 誰も居ない場所で女子生徒とふたりっきり。 なんだろう。つい最近そんなシチュエーションがあった気がする。 そんなことを考えていると、突然私の腕が引っ張られた。そのまま身体ごと自販機のひとつに押し付けられる。背中を強打し、ぐえっと情けない呻き声が漏れた。 金髪の彼女は私のネクタイを掴んで、先程のように睨めつけると、短く言った。 「どうして、キリエをフッたんだ?」 「キリエ?」 と、問い返した私に金髪の彼女が激昂した。 「惚けんなっ!」 噛み付かんばかりの剣幕で叫び立てる。背後にある自販機のガラス板が震えたのを、背中で感じた。 「お前が昨日、キリエのことをフッたんだろうがっ」 「……ああ」 221 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 44 49 ID kVeCnTh+ そこでやっと思い出した。彼女が言うキリエとは、どうやら田中キリエのことらしい。昨日、という言葉で思い出した。 確かに私は昨日、田中キリエに放課後の教室で告白された。彼女の気弱そうな姿態が瞬時に脳内に再生される。あまり関心がなかったのですっかり忘れていた。 それはさておき。まさか金髪の彼女の口から田中キリエの名が出るとは思わなかった。口ぶりからして、おそらく彼女は田中キリエの友人かなにかなのだろうけど。それにしたって、性格も体格も随分と正反対なものだ。一体どういう経緯で友情関係を結んだのだろうか。 ネクタイを締める力が一段と強くなった。早く話せと言うことなのだろう。それにしても苦しい、呼吸するのが難しいくらいだ。これじゃあ話す云々以前の問題である。 私は懇願するように言った。 「わかりましたわかりました。話しますから、まずそのネクタイを締めるのを止めてもらえませんか?苦しくて仕方がないですよ」 「…………」 しかしこれを完全にスルー。 マズイ。早めに会話を切り上げなくては、自分はこのままでは生命の危機に直面することになってしまう。 私は彼女の瞳を見据えて話す体勢に整えると、切れ切れの声で言った。 「私が田中さんの告白を断ったのは、彼女があまりに私のことを知らないからですよ。私は本来、人と付き合えるような人間じゃあないんです。それを田中さんは知らない。彼女は上辺の私しか見ていない、だからです」 「それだけか?」 それだけ、というのは随分と引っ掛かる言い方だが、一刻も早く解放してもらいたい私はすぐに首肯した。 「……そうか」 ネクタイを締める力が一気に弱められた。瞬く間に身体に酸素が供給される。 やっと解放された、と思った時だった。 油断したのがいけなかったのだろう。 金髪の彼女が、空いたほうの手で私の無防備な腹を殴り上げるのに、私は反応出来なかった。 腹部に激痛が走り、数秒の間息が出来ない。口元を手で押さえて、胃から逆流してくるものを慌てて飲み込む。何も食べていなくてよかった。 222 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 46 13 ID kVeCnTh+ 体も崩れ落ちそうになったけれど、そんなことをしたら本当に脈が締まってしまうので、自販機に寄り掛かるようにしてなんとか体勢を保つ。 突然、何をやるんだこの人は。 私は金髪の彼女を見た。 「そんな理由で……キリエは」 そんな私のことには気にもかけず、金髪の彼女は独り言のようにごちていた。 そして、キッと視線を上げると言った。 「キリエはなあ、ずっとお前のことが好きだったんだよっ。それこそ高校に入る前からずっと、それをなんだ?そんなくだらない理由でキリエの気持ちを無下にしやがって何様だお前はっ」 彼女は私を責めるように言った。 しかし、怒る彼女をよそ目に、私は今の言葉に違和感を感じていた。 「……ずっと前?」 それはおかしい。 私が初めて田中キリエと出会ったのは二年で同じクラスになった時からである。それ以前は、少なくとも私は、彼女とは面識がないと思っていた。 田中キリエとは中学校、小学校共に違っていた。なので、一年からならまだしも、入学以前から好いているというのは絶対におかしいのだ。彼女が私のことを知っているはずがない。 「あの……」 と、金髪の彼女に質問してみようと思ったが、とてもそんな雰囲気ではないので諦める。触らぬ神になんとやらだ。 それから、長い沈黙が流れた。 私も彼女も何も言わない。 そして金髪の彼女が唐突に、今まで掴んでいたネクタイを離した。 突然のことで驚いたが、やっと訪れた自由に私は内心喜んだ。 金髪の彼女はスカートのポケットからタバコを取り出すと、慣れた動作で火を点け、紫煙をはきだす。 未成年の喫煙は法律で禁じられていることを伝える勇気は、勿論ない。 「キリエと付き合え」 彼女が口を開く。 「お前が人と付き合えるような奴じゃないって言うのには同意するよ。ひ弱だし、何考えてるかわかんないし、確かにどう見たってクズ野郎にしか見えない」 ひどい言われようだ。 223 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 49 23 ID kVeCnTh+ 「けど」 彼女は短くなったタバコを地面に落とし、踏みにじって火を消した。 「私はキリエに結果をあげたいんだ」 「結果?」 「そう、結果だ」 金髪の彼女は続ける。 「キリエはお前が思っているよりも、本当に長い間お前のことを想ってきたんだ。本当に、ひたすら一途に。それが、必死の思いで告白したのに、断られてハイ終わりじゃいくらなんでも悲しすぎる。私だって納得がいかない 「変な言い方になるが、正直私はお前がクズならクズで構わないんだ。それでキリエが、ああ私が好きになった人はクズだったんだなって分かれば、キリエだって納得するさ。それならそれで、さっさと別れちまえばいいんだからな。 「お前は、キリエが自分のことを知らないから断ったって言ってたけど、お互いのことを知らないなら付き合ってからお互いのことを知っていけばいいだけの話だろーが。それぐらい気づけ馬鹿。 「とにかく、私はこのままキリエの恋が終わるのは絶対に嫌だ。これは、アイツが初めてした恋だから」 金髪の彼女は悲痛な表情のまま、新しいタバコに火を点けた。どうやらもう話は終わりらしい。 私は彼女の言葉を頭の中で反芻し、吟味し始めた。 つまり、金髪の彼女が言いたいのは、田中キリエは長年私のことを想ってきたのにもかかわらず、私が自分勝手な理由で拒絶してしまったので、このままでは田中キリエも金髪の彼女も納得しない形で終わってしまう。 だから、とりあえず付き合って何らかの結果を出せ、ということなのだ。 確かに、その通りなのかもしれない。 現に私は昨日、田中キリエの告白を断った時、彼女の想いなど全く考慮に入れていなかった。自分は人と付き合える筈が無いと身勝手な結論を振りかざしていただけだ。 言うまでもなく、それは不誠実なのだろう。 お互いを知らないなら、付き合ってから知っていけばいい。 金髪の彼女はそう言った。その発想は私の中になかったが、確かにそれもひとつの恋愛の形なのかもしれない。 224 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 51 00 ID kVeCnTh+ 二本目のタバコも吸い終わった彼女は、イラついた目で私を見た。早く返事をしろと目で促している。 そんな彼女を見て、私は思う。 羨ましいなあ。 私は田中キリエに対して素直にそう思った。 目の前の彼女のように、これほどまでに友人のことで、熱心に悩んでくれる人間は、現代の日本にはそういない。皆、どこかで自分を優先してしまうからだ。しかし、彼女にそれがない。 私には親友と呼べるような存在がいない。なので、それがより一層羨ましいと思えた。 けれど、そこに妬みは無い。言うならば、希少な宝石でも見るような気持ちだった。 「わかりました、彼女に再度、交際を申し込みましょう」 私は幾分か愉快な気持ちになれたので、快く彼女の提案を受け入れることにした。 「今日の放課後にでも、田中さんに告白します」 「放課後?」 金髪の彼女は怪訝そうに聞いた。 「お前、キリエの家知ってるのか?アイツ今日学校休んでんだろ」 「そういえば、そうでしたね」 全く知らなかった。 「それじゃあ明日にします」 と私が言うと 「いや、今日行け」 金髪の彼女はきっぱりと言った。 「私はキリエの悲しんでいる顔を一秒でも長く見たくない」 彼女は本当に田中キリエのことが好きなんだな、と私は益々嬉しくなる。 「わかりました。それじゃあ田中さんの住所を教えてもらえますか?」 そう言うと、金髪の彼女は田中キリエの住所を述べた。口頭だったので大変だったが、なんとか覚えた。 「今日、絶対にキリエに告白しろよ。わかったな」 「ええ、わかりました」 金髪の彼女は最後にそう念を押すと、私に背を向けて歩き出した。これで本当におしまいらしい。 「あっ、そうだ」 しかし、そこで彼女は思い出しように呟くと、私の近くまで戻ってから言った。 「あと、これは個人的な感情」 そう言って彼女は、右足を軸にくるりと一回転した。回し蹴り、と頭が認知した時には、彼女の左足が私の右側頭部を貫いていた。 225 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 52 09 ID kVeCnTh+ 白い光が眼前にはじけ、世界は一回転する。 地面にたたき付けられた。口内で血の味が広がる、少し切ったようだ。 まだ回り続けている視界の中で、金髪の彼女は私の髪を引っ張り、無理矢理顔を上げさせた。 「色々と言ったが、はっきり言って、私はお前みたいな野郎がキリエと付き合うのは堪らなく嫌なんだよ。本当、腸が煮え繰り返そうだ」 真っ黒な瞳が、私を見る。 「いいか、覚えとけよ。もしこの先、お前がキリエを悲しませるようなことをしたなら、私はお前を――」 彼女は一拍置いて 「――殺す」 髪から手を離され、私の顔は再び地面に戻った。そして、憮然とした態度で去って行く金髪の彼女を見上げる。短いプリーツスカートから、下着が見えた気がした。 そして冬空の下、私だけが残った。 帰ろう。そう思って立ち上がろうとするが、膝ががくがくと震えて立ち上がれない。おそらく、脳震盪だろう。 仕方がないので、そのまま冷たい地面に横たわった。 脳震盪は安静により短時間で回復できることを、私は知っていた。短く逆立った雑草が、頬をちくちくと刺して不快だったが我慢する。 ――それにしても。 殺すと言った時の、金髪の彼女のあの真っ黒な瞳を思い出す。 心底、震えた。びっくりした。さっきのは脅しでも冗談でもない、間違いなく本気だった。 私は本気で殺すと言った人を見るのは始めてだった。遅れて、冷や汗がどっと吹き出す。 どうやら私はひとつ思い違いをしてたみたいだ。 金髪の彼女が田中キリエに対して抱いていたのは、友情ではなく、異常なまでの愛情だった。いや、依存心かもしれない。いずれにせよ、普通ではない。 ひとつ、確信する。もし、私が本当に田中キリエのことを悲しませるようなことをしたならば、彼女は間違いなく、私を殺すだろう。 「困ったな」 これから先、田中キリエと付き合っていくことを考えると、うんざりした。これからは死と隣り合わせである。 その時になって、漸く私は自分が面倒な事態に巻き込まれているのだと、自覚した。 「くわばらくわばら」 そんな独り言と共に、私はゆっくりと瞳を閉じる。 近くの体育館から、バスケットボールを楽しむ生徒の声と上履きの摩擦音が響いていた。 226 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 52 55 ID kVeCnTh+ 結局、教室に戻った頃には、もう昼休みも終盤を迎えていた。 私は制服についた汚れを落とし、水道水で口をゆすいでから教室へと向かった。 何だか、今日は散々な昼休みだった気がする。体中が痛むし、胃袋も先程から食物を切望して、悲しく鳴いていた。 まあこんな日もあるさ、と切り替える。 変わったことが起きた。 教室に着いて、ドアを開けるとクラス中の人間が一斉に私のことを見た。 視線の矢が何本も突き刺さり、思わずどぎまぎしてしまう。けど、人気者になったみたいでちょっと嬉しい。 比較的仲の良い男子生徒の何人かが、私のほうに寄ってきた。そうでないものも皆、私に注目している。 「おいタロウ、お前昼休みにマエダカンコに拉致されたって本当かよ」 取り巻きのひとりが口を開く。 「聞いたぜ、マエダに購買部で引っ張られてって、どっかに連れてかれたんだろ?ウチのクラスにも何人か見たって奴いるぞ」 マエダカンコというのが、あの金髪の彼女の名前だというのにはすぐに気付いた。 「はい、本当ですよ」 「マジかよっ」 クラスが一段とざわつく。 「お前、一体マエダに何されたんだっ」 「それはもう、ヒドイ目にあいましたよ」 ふて腐れるように言う。 本当にヒドイ目にあった、彼女のせいでカレーパンどころか昼食もとれなかったのだから。 私がマエダカンコに連れ去られたとわかった途端に次々と質問がとんできた。 「具体的には何されたんだよ」 「一体、マエダとはどういう関係なんだ?」 「なんでお前生きてるんだ?」 某太子と違って一度に多数の質問を聞けない私は、矢継ぎ早の質問に目を回してしまう。 そんな私に助け舟を出すように、予鈴のチャイムが鳴った。皆、まだ聞き足りないといった感じだったが、渋々席についていく。私もほっとして自分の席に戻っていった。 227 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 54 48 ID kVeCnTh+ 教師はまだ来ないようだった。次の授業を担当する数学教師は時間にルーズなことで有名であり、いつも遅れてやってくる。 暇を持て余した私は、せっかくなので隣の席の男子生徒にマエダカンコについて聞いてみることにした。 「マエダカンコ?タロウ、お前マエダも知らないのかよ。アイツほどの有名人、この学年じゃ知らない奴はいないと思うぞ」 「すいません、無知なもので」 私は苦笑する。そんなに有名人だったのかあの人。 「まあ仕方ないか、アイツが本格的に有名になりだしたのも、つい先月からだしな」 話す気が起きたのか、男子生徒は椅子を私の眼前にまで寄せた。それから、マエダカンコについての情報を耳打ちする。 「マエダカンコ、二年一組所属。素行はかなり悪い。学校では誰ともつるまずに一匹狼を貫いている。元々、アイツもあんなナリしてるから学内ではそこそこ有名だったんだ。平然と教室でタバコ吸い出したりするしな。 「まあ、それだけなら何処の学校にでも居る不良ちゃんで終わるんだが、先月にある事件が起きてから知名度が一気に撥ね上がった」 「ある事件、ですか?」 私は繰り返す。 「ああ。ほら、マエダって中身はともかく、顔とかスタイルとかはスゲエいいじゃん?だから、前々から三年生の先輩達、あっちなみにこれも中々のワルね、が結構ナンパまがいのことをしてたわけよ」 関係ないが、彼が話す度に耳元に生暖かい息が吹きかかって、なんともこそばゆい。背筋がぞくっとする。 「けど、マエダはそんな先輩達を全く相手にしなかったんだ。そりゃもうガン無視。で、先輩達も遂に怒りが天に達しちまって、ある日の放課後、マエダをどこかへと連れさったらしいんだ。それが、ちょうど先月のこと」 「それで、マエダさんはどうなったんですか?」 男子生徒は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。 「それで、マエダカンコがどうなったかというと――」 228 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/04/19(月) 07 56 20 ID kVeCnTh+ 勿体振るように長い間を置いてから、芝居がかった口調で言った。 「――全治ニヶ月。それもマエダじゃなくて先輩達のほうがな。みんな病院送りだよ。まあ流石にやったのはマエダじゃなくて、アイツの知り合いかなんかだろうけど、それにしたってやり過ぎだ。 「だからそれ以来、マエダカンコはキレたら何するかわからない奴だって言われて、みんなびびっちまってるのさ」 これで終わりだと言うように、男子生徒はパンと手を叩いた。 ちょうどその時、黒板側のドアが開き、数学教師が入って来た。狙ったようなタイミングの良さだ。 「また後でな」 男子生徒はそそくさと自分の席へと戻っていく。私も机の中から教科書とノートを取り出した。 授業が始まり、黒板にチョークを走らせる音が室内に響く。授業に集中している者はノートをとり、そうでない者は腕を枕に眠っていた。 そんな中、私はマエダカンコのことを考えていた。 三年生の先輩方を病院送りにしたのは、間違いなくマエダカンコだろう。それはゆるぎのない確信だ。 あの回し蹴りが脳裏をかすめ、思わず身震いする。 男子生徒の話を聞いて、ますます私が殺される確率が上がった気がする。 嫌だなあ、と思いながらノートをとる。まあ悩んだって仕方はない。今は、田中キリエへの告白について考えよう。 そして、私は自身の初告白の言葉を思い浮かべていく。 この時、私はひとつ見落としていることがあるのに気づいていない。 私は、田中キリエがどんな人間なのかを全く理解していなかったったのだ。
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/2968.html
リゾネーター・エンジン(OCG) 通常魔法 自分の墓地に存在する「リゾネーター」と名のついた モンスター2体を選択して発動する。 自分の[[デッキ]]からレベル4モンスター1体を手札に加え、 選択した墓地のモンスターをデッキに戻す。 デッキサーチ リゾネーター補助 墓地再利用 魔法
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/50479.html
登録日:2022/02/13 Sun 04 18 20 更新日:2024/04/04 Thu 13 57 06NEW! 所要時間:約 5 分で読めるニンジン ▽タグ一覧 かませ犬 やられ役 キカイトピア王朝トジテンド ゲゲっと飛び出た神のちょっかい! ショボい スーパー戦隊シリーズ ダイコンワルドの親戚? ダイニンジンワルド ダイワルド ニンジン ニンジンいらないよ ニンジントピア ニンジンワルド ワルド 不人気 不憫 不遇 二番煎じ 人参 今週の怪人 使い回し 受け継がれるレーザートカゲの魂 嫌われ者 怪人 戦隊怪人 戦隊悪役 捨て石 最弱候補 機界戦隊ゼンカイジャー 着ぐるみの改造 瞬殺 野菜 雑魚 駒東寛之 まてまてまて~い!貴様らをニンジンに変えてやるニンジ~ン! ニンジンワルドは『機界戦隊ゼンカイジャー』に登場する怪人。 【データ】 声:駒東寛之 身長:191cm 体重:277kg 世界:ニンジントピア 名産:ニンジンのヒーロー 名物:キャロットンファー、ビームカロティン 【概要】 第46カイ!「ゲゲっと飛び出た神のちょっかい!」に登場。 キカイトピア王朝トジテンドの手により、ニンジンの世界「ニンジントピア」を閉じ込めた「ニンジントジルギア」で誕生したワルド怪人。 おろし金ですり下ろされかけてる人参のような頭部が特徴……というよりはダイコンワルドの色違い。 語尾は「~ニンジン」。 【能力】 主な武器は「キャロットトンファー」だが、近接戦は絶望的に向いていない。 ニンジンワルドの切り札は、キャロットトンファーから放たれる「ビームカロテイン」。 恐ろしいことに、このビームを浴びると色合いがニンジンになり、子供人気がかなり下がってしまう。「うわああああああ にんじんになってく~!!!!」「うわあああああ にんじんになっちゃうよ~!!!!!」 ニンジンと言えば、子供が嫌いな野菜の代表格。まぁ大人でも嫌いな人はいるし逆に好きな人は好きだが…… 子供達はニンジンにされた人々を見ると一目散に逃げ出してしまう。 ガオーンのような子供ちゅわ~ん大好きな人にとっては、地獄のような能力である。 あっ…いや、書いてあることは間違いじゃねぇんだが………うん、やっぱ言うわ ぶっちゃけショボくねーか!?コイツ!! そう、ニンジンワルドの能力は子供人気が下がるだけ。 洗脳効果も無ければ、戦闘に支障をきたすようなこともない。あと人参が好きな子供に対しては多分逆効果になる ジュランのツッコミ通り、ワルドの中ではぶっちぎりで弱い部類に入る。 参考がてら同カイに登場したサファイアワルドとコウモリワルドの能力を見てみよう。 サファイア:得意技は人々を宝石の虜にさせる「サファイア・アイ」。これを浴びた人は、他の人が身に付けている装飾品を無理矢理奪う暴徒と化してしまう。 コウモリ:「吸血音波」で人々を吸血鬼に変貌させ、人々を襲わせて仲間を増殖させる。 このように戦闘力が低いワルドは、代わりに凶悪な特殊能力を使うのが通例だが、ニンジンワルドはそれが明らかに釣り合っていない。 前カイに登場した史上大凶最凶のオミクジワルドと比べると、なおさら実力の低さが目立つ。 せめてテニスワルドのように「人々をニンジンそのものに変える」ことができたら、料理という名の殺人事件のオンパレードで容易く侵略できたのだが……。 或いは個性がしょっぱいのは「超が付くほどのスロースターターだからという」可能性もあるので、ハカイザーの護衛があれば隠された能力を発揮できたかもしれない。(*1) とはいえ、考えようによってはニンジンワルドの「子供人気を下げる能力」で、大きな悪事を行う事も不可能ではなかったはずである。 例を挙げれば現実世界で言うところの財団Bみたいな「子供番組に関わるスポンサー」。 もしこれでコンテンツ自体がニンジン化されれば子供人気がDOWNし、視聴率も玩具の売り上げもゾッとするほど下がってしまい、大赤字にされてしまう……という悪事だって可能のはずである。 劇中では散々「弱い」とディスられていたニンジンワルドだけれども、子供向け商品を展開する企業の関係者や、保育士などの子供と触れ合う機会が多い職業の人にとっては迷惑極まりない存在である。 「子供の人気」も案外バカにできないのだ。 【ダイニンジンワルド】 声:駒東寛之 身長:48.1m 体重:2238.0t 暴走したニンジンパワーがクダイテストに満ち満ちて生まれる巨大級ニンジン戦闘兵。 流石に点で話にならなかったニンジンワルドよりはマトモに戦える。 得意技は無数のニンジンを繰り出す「ニンジンアタック」。技名なんとかならなかったんかい 【劇中での活躍】 前カイのラストで「自分は神だ」と明かしたステイシー…もといステイシーの身体を乗っ取った神だが、ゼンカイジャーは中々信用してくれない。 そこで神は「次に現れるワルドはニンジンワルド」と予言し、翌日、まさにニンジンワルドが人間界に侵攻する。 ゼンカイジャー!?何だその、俺が来るとわかってたみたいな物言いは!? うるせえな!こっちもぶっちゃけビックリなんだわ! ゼンカイジャーは神の予言が的中したことに驚くが、ニンジンワルドも初対面のゼンカイジャーに知られていることに驚く。 そして、直ぐ様ビームカロテインでゼンカイザーをゼンカイレッドニンジン化させ子供人気を落とすことに成功する。 しかし、当然戦況は全く変わらなかったので「ゼンカイフィニッシュバスター」をモロにくらって爆散。 登場から1分足らずで退場してしまった。 ニンジンワルドめ~!やたら早くやられやがって!! そこへクダイテストが盛大なメタ発言をぶちこみながら参上。 ダイニンジンワルドと化してからはゼンカイオージュラガオーンと交戦する。 だが、元があまりにも弱かったせいか終始防戦一方で、自慢のニンジンバスターは「ガオーン3秒間クッキング」で花の飾り切りにされて跳ね返される。 最期は「ジュランソード円月クラッシュ」で一刀両断されて爆散した。 紅葉おろしは…ニンジンじゃないニンジン~!! 大根おろしにトウガラシ混ぜたやつね!(*2) 実は予言の正体は、ゲゲの身体を操る神がニンジントジルギアを解放しただけ。 要するにただのマッチポンプである。 【余談】 ニンジンワルドのようにあまりにも早く倒された怪人はシリーズではそんなに多くない。『鳥人戦隊ジェットマン』のレーザートカゲ、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の臨獣トード拳エルカ、『天装戦隊ゴセイジャー』のショートのザンKT3辺りを思い出した視聴者も一定数いるのでは? 頭部はダイコンワルドの改造(*3)。なお、ダイコンワルドは捨てられた物の恨みを晴らすワルドだが、皮肉にもニンジンワルドは神の捨て石にされてしまった。 ニンジンは長年「子供が嫌いな野菜」では上位に入る猛者だったが、近年では品種改良もあってニンジン嫌いの子供は減少傾向にある。ピーマンワルドの方がマシだったんじゃ…… 本カイに登場したワルドの共通点は「リペイント元のダイワルドはニュークダイテストが素体となっていた」ということ。なお、本カイのダイワルドは全て通常のクダイテストが素体となっている。 ニンジン化したゼンカイザーのスーツは『機界戦隊ゼンカイジャー スピンオフ ゼンカイレッド大紹介!』に登場したゼンカイレッドのスーツの再利用。ちょうど本カイの担当監督は同スピンオフも手掛けた加藤弘之監督であり、『ゼンカイ備忘録』でも「加藤監督ならではのサプライズ!」という形で言及している。まさかこんな形で使われようとは……ただし、バックルの色がツーカイザーと同じ赤色になっている(本来のゼンカイレッドのバックルはゼンカイザーと同じ白いもの)。 ニンジンが嫌いなら、早く追記・修正するニンジン~! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ニンジンワルド、サフィアワルド、コウモリワルド 一見すれば3体とも関連性がないに思えるが、実は3体とも元ネタがニュークダイテストを使っていたと言う共通点がある。 -- 名無しさん (2022-02-13 05 58 05) 兎人参化の下位互換 -- 名無しさん (2022-02-13 07 26 28) 実は近年の子供ちゅわん達はニンジン好きだったりする。同様のテンプレだったトマトはぶっちぎりで好かれてたり。時代は変わったなぁ(主に野菜の美味さ?) -- 名無しさん (2022-02-13 07 59 59) 「うわああああああ にんじんになってく~!!!!」 -- 名無しさん (2022-02-13 08 50 06) ヴィオラート「ニンジンを虚仮にするとはいい度胸してますね」 -- 名無しさん (2022-02-13 09 07 02) なんて…なんてしょーもない能力だ… -- 名無しさん (2022-02-13 09 32 41) 人参化したゼンカイザーはどっちかって言うと赤かぶに見える -- 名無しさん (2022-02-13 10 19 29) バンダイ「なんて 恐ろしい能力なんだ」 -- 名無しさん (2022-02-13 10 34 30) ↑「キャベツじゃねーか!!!」 -- 名無しさん (2022-02-13 11 40 57) いやラストの打ち切りの下りはいらんだろ -- 名無しさん (2022-02-13 14 41 59) ダイニンジンワルドの最後が大根ネタなのが大根ワルドの流用なせいか -- 名無しさん (2022-02-13 15 04 33) ウマ娘たちにとっては楽園のような世界だろうなぁ…>ニンジントピア -- 名無しさん (2022-02-13 21 08 42) ボッコワウス様の発言からすると他にもジャガイモトピアやゴボウトピアもあるらしい? -- 名無しさん (2022-02-13 21 30 35) 教師や学校に対して使えば教育体制があっという間に崩壊するであろうことを考えると使い所さえ考えれば案外恐ろしいことになりそうなんだよなホント。戦闘にはクソほども役に立たないだけで。 -- 名無しさん (2022-02-14 07 44 11) 嫌いな野菜ランキング、ピーマン以外にはナスや椎茸が常連らしい -- 名無しさん (2022-02-14 20 02 18) 39バーン!のレッドもチンジャオロース以外のピーマン嫌いだしな -- 名無しさん (2022-03-09 05 18 32) ニンジンを強く好む生き物が多く暮らしているようなトピアだったらガチで共食い沙汰の大惨事に持ち込めたのかもしれないが……。 -- 名無しさん (2023-06-17 19 47 21) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1590.html
105 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 44 47 ID +7NZkhJf カタンカタンと、電車は一定のリズムを刻んで進んで行く。 夕方時の静かな車内は、凍てついた外界とは対照的に暖かい。 ふくらはぎを撫でる温風が、私の冷えた足を温めようと躍起になっていた。 車内の席は全て埋まっていた。 帰宅途中の学生、うたた寝している老人、くたびれたスーツを着た中年サラリーマン。みんな、どこか疲れた顔をしていた。窓から差し込む夕日が、顔に影をつくっているからかもしれない。 私は、心地良く振動する座席に身を預けて、ぼんやりとそれらを眺めていた。 一瞬、自分が何をしているのかわからなくなる。 いきなり違う世界に放り込まれたような、そんな感覚。 けれど、まだ咥内に残る鉄の味と右側頭部の疼痛が、そんな私を叱咤した。忘れるな、と。 そこで思い出す。 そうだ。私は今田中キリエの所に向かっているのだった。 水面に浮かび上がっていく気泡のように、じんわりと思い出されていく記憶。 まず思い浮かんだのは、昼休みに見た、マエダカンコの穿いていた下着だった。意外と子供っぽいデザインだったのをよく覚えている。 次に思い出したのは、彼女から喰らった回し蹴りだ。あれは痛かった。気絶するかと思った。 そんなことを回想しながら、私はハーっと息を吐いて、さらに深く座席にもたれかかった。 油断するとそのまま眠りに落ちてしまいそうだった。私は昔から乗り物に乗ると眠くなる癖がある。そして、未だにその癖は治っていない。 私は靄がかかった思考で、ゆっくりと今日の放課後のことを回顧した。 マエダカンコとのちょっとしたやりとりを。 106 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 45 22 ID +7NZkhJf 今日の放課後のことだ。 「鳥島タロウ居るか?」 突如、教室内に響き渡ったハスキーボイスはクラスの和やかムードを一瞬で瓦解させた。 同時に、教室の時間をも止まらせた。 時間を止まらせた、というのは決して比喩などではない。文字通り本当に止まったのだ。 机に座って談笑していた生徒も、教科書やノートを鞄の中に詰め込んでいた生徒も、今から部活に行こうと意気込んでいた生徒も、みんなピタリと、まるで蝋人形のように固まってしまった。凍り付いたと換言してもいいだろう。 教室の温度も一気に下がった気がした。もしかしたら暖房も止まってしまったのかもしれない。 そんな、一気に大氷河期にへとタイムリープしてしまった教室の中。当の私は机の下に隠れていた。 咄嗟の判断である。彼女の声を聞いた瞬間に身体が自然に動いていた。これは手を抜かずに真面目にやってきた防災訓練の賜物だと思う。 私は机の脚を両手で握りしめ、少しだけ顔を上げてみた。 ハスキーボイスの発生源、マエダカンコはギラついた目で教室を一周させた。しかし、私に気付いた風ではない。 どうやら、この瞬時の機転により彼女の位置からでは私が見えないようだった。 これは千載一遇のチャンスだ。 私は机の下から、こっそりと机上の鞄を持ち込むと、彼女のいない方のドアまで、腰を屈めて歩いて行こうとした。 「おい、そこのお前。鳥島タロウの席はどこだ」 疑問形なのか命令形なのかイマイチわからない口調で、マエダカンコは近くの女子に尋ねていた。 女子生徒はヒッと軽い悲鳴を上げてから、震える声で言った。 「あ……あそこに……」 と、指を指すその先には当然の如く私が居た。 隠れているものもピンポイントで見られては見つかってしまうものだ。 「鳥島タロウ、来い」 今度は間違いなく命令形だった。 「……はい」 私は立ち上がって、のろのろと彼女のもとへと歩いていく。 クラスメイト達は固まりながらも視線だけは私に向けていた。 尋問されていた女子が申し訳なさそうに私を見ている。彼女を責める気は毛頭ない、あんな風に聞かれては誰だって答えてしまうだろう。 なので、私は安心させるように、にこりと微笑んでやった。 こうして私は、赤紙を出された次男坊のような心持ちで、マエダカンコに再び拉致されていったのだった。 107 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 46 32 ID +7NZkhJf 彼女に連れて来られたのは、私が昨日、田中キリエの恋文を読んだ場所でもある非常階段であった。 また自販機前だろうと思っていた私は少々拍子抜けをした。 「言い忘れたことがあった」 と、マエダカンコは切り出す。 「昼休みのこと、キリエには黙っていろ」 簡潔に出された彼女の勅令に、私は「はあ」と曖昧な返事をした。そして、一応助言してやる。 「それは構いませんが、仮に私が黙っていたとしても、結局は田中さんに伝わっちゃうと思いますよ。私とマエダさんが昼休みに会っていたことは、それなりに広まってるみたいですし」 さっきの教室での級友達の態度を見ればわかるだろう。 しかし彼女はあっけらかんな態度で続けた。 「違う。私が言ってるのは昼休みにお前と会ったことじゃない。昼休みにお前と話した会話の内容だ」 「会話の内容?」 私は問い直す。 「ああ。キリエに関する会話全てだ。後それとお前、私のことをマエダさんとか馴れ馴れしく呼ぶんじゃない」 「わかりました。それじゃあ、カンコさ――ごぐぁっ」 無言で腹パンされた。 「次、その名で呼んだら殺すからな。と、話を戻すが、要は私がお前にキリエと付き合えと指示したことをキリエには言うなってことだ」 あれは指示じゃなくて脅迫ではなかろうか。なんてことは言えない。 「あくまでキリエに告白し直すのはお前が自分で考え、自分で判断した、全くの独断ということにしろ。私のことを聞かれても一切合切話すな。わかったな」 マエダカンコはそう念を押したが、私には彼女の言いたいことがイマイチわからなかった。 「どうして話しちゃいけないんですか?」 「はあ?」 彼女は呆れた目で私を見た。出来の悪い生徒を見るような目だった。 「何言い出すかと思ったら……。あのなぁ、今日いまからお前がしに行く告白がお前の意思じゃなく、私の指示によるものだってことをキリエが知ったら、私が無理矢理お前に告白させたみたいでキリエも素直に喜べないだろうが。そんなこともわかんないのか?」 「なるほど」 私はポンと手を打った。実を言うと、よくわかっていない。 108 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 47 10 ID +7NZkhJf 「わかりました。つまり、昼休みのことを田中さんには話すなということですね。ですが、それでは昼休みの逢い引きはどう説明――ぐごぁっ」 「逢い引きじゃねえだろーが。さっきから思ってんだが、わざと言ってんのかテメェ。そうだとしたらマジで殺すぞ。 「昼休みのことは、もしキリエがそのことを知ったら、私から適当に話しておく。お前のことがムカついたから殴った、とでも言うさ」 「……わかりました」 ムカつくから殴った、で彼女は納得するのだろうか。 「話はこれで終わりだ。わかったんならさっさとキリエのとこ行ってこいよ。それじゃあな」 そう言い残して、彼女は台風のように去っていったという訳だ。 とまあこんな感じのことがあって、私は今のように、いつも利用する路線とは別のものに乗り込んで、殊勝にも田中キリエのもとへと向かっているのだった。 電車の速度が徐々に落ちていき、噴出音と共に扉が開いた。 ご老齢の方が乗り込んできたので、私は席を譲った。 ありがとうございます、と礼をされ、それに笑顔で返した。 そのまま扉近くまで移動し、高速で変化していく光景を眺める。 今まで告白云々と色々語ってきたが、正直、田中キリエが告白を受け入れてくれるかどうかも、私にはまだわからなかった。 なにせ、私は昨日一度彼女の告白にノーと言っている。 そんな男が昨日の今日で、やっぱ付き合ってください、なんて言っても彼女からしたら、今更なんだと思わざるを得ないだろう。断られる可能性だって決して低くはない。 まあ、自分としては今後のことを考えると、断ってもらったほうがいいのだけれど。正直、マエダカンコのことを考えるとこの先気が重い。 でも、仕方がない。 私は思う。 これが青天の霹靂であるにしろ、ともかく、私はもう約束してしまったのだ。こうなれば、もう乗りかかった船だ。与えられた任務は最後まで遂行しようと思う。 そう私が決意した時、ちょうど電車は踏み切りの前を過ぎった。 カーンカーンと情けなくなっていく電子音が、しばらく耳の中で反響していた。 109 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 47 44 ID +7NZkhJf 目的の駅に着き、私は駅を出た。 あまりの寒さに思わず身が震える。 初めて来る街だった。私の住んでいる街より、幾らかグレードが高いように感じた。高級とまではいかない、中級住宅街といったところか。 マエダカンコから聞いた住所はまだ覚えている。田中キリエは何処かのマンションかアパートの三○一号室に住んでいるらしい。 見馴れない街並みではあるが、適当に電柱に印された住所でも見ながら歩いてれば、じきに辿り着けるだろう。 そんな楽観的な考えを持って、私はのんびりと街の中へと歩き始めた。 結果から言おう。どうにもならなかった。 理由は三つある。 一つ、土地勘が全くないこと。 二つ、郊外のベッドタウンだけあってマンションもアパートも異様に数が多いこと。 三つ、彼女の苗字の“田中”だ。 全国でも多数存在するその姓名は思ったより私を悩ませた。 田中と書かれた表札を見る度に、田中キリエとは違う田中さんだと理解しているのに、身体が一々反応してしまうため、頭が疲れるのだ。 そんなこんなで十二軒目の田中さんを発見した頃、私は駅前まで帰還してしまうという摩訶不思議な現象に陥ってしまった。 「迷いの森か何かなのか此処は……」 今現在、私は駅前の精悍な顔つきをした男性の石像の前に座り、疲れた足を休めていた。 気分はまるで青い鳥を求める少年だ。まだ青い鳥すら見ていないけれど。 おもむろに空を見上げる。 太陽はもうすっかり傾いてしまって、水平線の向こうからゆっくりと黒が侵食し始めていた。 夜間に人の家を訪ねるのが失礼なことくらい、さすがの私でも心得ている。 「これじゃあ今日は無理かな……」 そんな弱音を吐いていると、不意に金髪が脳裏を過ぎった。 私はがっくりと肩を下ろした。 やっぱり今日中にやんなくちゃダメだよなあ。殺されるんだもんなあ。 けれど、このまま闇雲に歩いてても徒労に終わるのは目にみえている。果たしてどうするべきか。 幾らかの逡巡の後、私は疲れた足をバンと叩き、いきなり立ち上がってみた。 こんなとこで座ってたって何も始まらない。闇雲でもいいからとにかく歩こう。 と、珍しくやる気を出したところで私は、あっと悲鳴を漏らす。 なぜ今まで気づかなかったのだろうか。 私の目の前には駅前交番があった。 110 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 48 17 ID +7NZkhJf 目の前には、建てられて間もないだろうマンションがあった。 その建造物は、全体的に四角い形をしていて、備えられている窓や扉も全て真四角だった。階数もきっかり四つだ。今風の小洒落たデザインで、白の漆食で塗られた壁には汚れひとつない。 私はまじまじとそのマンションを見上げた。 サイコロみたいな形をしているな、と思った。 エントランスに足を踏み入れる。 外の壁の真っ白さとは対照的に、中の壁は全て黒めの剥き出しのコンクリートブロックで埋められていた。 世間ではこういうのがお洒落なのだと言うのだろうけど、季節が季節なのだけに、今の私にはただ寒々しいだけだった。夏にはちょうどいいかもしれない。 最新のマンションにも関わらず、オートロックは常備されていなかった。そういえば監視カメラも見当たらない。意外とセキュリティ関係には手を抜いているみたいだった。 エレベーターを使わずに、横に備え付けられた階段を使って三階まで上る。 三階の角部屋に田中キリエの家はあった。 私は、その真四角の扉の前に立ち表札を見る。 表札の“三○一”の番号の下には“田中”とポップ体で書かれた名前があった。 やっと辿り着いたんだなあと、感慨深いものが込み上げてきた。気分はまるで母を求めて三千里、だ。 夕日は既に落ちてしまっている。 腕時計を見ると、時刻はもう既に七時を越す頃だった。思っていたよりも時間が経っている。 善は急げだ、と私は表札の下に設置されていた呼び鈴を押した。 ピンポーン、と間のぬけた音が扉越しに聞こえる。 確かに、聞こえたのだけれど 「…………?」 誰も出ない。 気づかなかったのだろうかと思い、念のためもう一度だけ鳴らしてみる。 ピンポーン。 再び呼び鈴が鳴るが、やはり何の反応も返ってこなかった。 呼び鈴はちゃんと鳴っているし、室内に居て気づかないということはさすがにないだろう。ということは、何処かに出かけてしまっているのだろうか。 111 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 49 04 ID +7NZkhJf うーん、と唸りながら私は頬をかいた。 どうやら、家内が留守なのは間違いないようだった。 このまま此処で待機していてもいいのだが、近隣住民に変質者と思われる可能性もある。果たしてどうするべきか。 私は扉の前でうーん、うーんと唸りながらくるくると回った。 後で思えば、その姿は言うまでもなく変質者だったのだろう。 「仕方ないか……」 私はピタリと立ち止まった。 出直そう、と心に決めた。 二、三十分も経てば帰ってくるだろうと思い、私は出直そうと、その場を去ろうとした。 すると、ぱたぱたと廊下を駆ける音が、扉越しに微かに聞こえてきた。 どうやらやっと来訪者に気付いたらしい。 ガチャリ、と鍵の開く音がして扉が開く。 「すいません、遅くなっちゃって。どなたでしょうか?」 そう言って出てきた田中キリエは、寝巻姿であった。子供っぽい水色のパジャマの上には桃色のカーディガンを羽織っている。あの大きな黒縁眼鏡をかけていなかった。 「……んー?」 彼女は目を細めながら私に顔を寄せていく。眼鏡をかけていないため、よく見えないのだろう。彼女の赤く腫れぼった目が眼前に迫ってきた。 ちょっと手を伸ばしてみれば、彼女の細い首に手をかけれそうだ、なんて想像をしていると、田中キリエが突然大きく目を剥いた。 心中を悟られた気がして、私はハッと息を呑む。 「…………」 しかし、彼女はそのまま無言で、パタリと扉を閉めた。 「……えっ?」 拒絶された、とまず思った。やはり今更私の顔など見たくないのだろうかと。 そう思った時だった。 「きゃあああああああっ!」 扉の向こうから、もの凄い叫び声が上がった。 「えっえっ、なんで、なぜ、どうしてっ。どうして鳥島くんが居るのッ!?なんでなんでなんでーっ!ハッ、ていうか私まだパジャマだし、顔も洗ってないし、髪もボサボサだしぃ、きゃあーっ!ああ、どうしようどうしようどうしよう見られた見られたー!」 「あのー、田中さん」 「ちょっ、ちょっとだけ待っててっ!」 そう言い残して、彼女はバタバタと駆け出し始めたようだった。 扉の向こう側からは何やら騒がしい音が聞こえてくる。おそらく、私を出迎えるの準備をしているのだろう。 元気な人だなあ、と思わず頬が緩んだ。 私は元気な人は好きだった。 112 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 49 44 ID +7NZkhJf それから約二十分後。 「おっ、お待たせ」 田中キリエは、黒のネックセーターに白の長いフレアスカートという落ち着いた服装で出て来た。その小さな顔には、いつもの黒縁眼鏡が掛けられている。 「さっきはゴメンね……なんか取り乱しちゃって」 先程の失態が余程恥ずかしかったのか、彼女の顔は真っ赤になっていた。 いえいえ大丈夫ですよ、と私はフォローをいれる。 「でも、少しびっくりしました。田中さんってあんなに大きな声出せるんですね」 「うー。……もう忘れて」 そんなやりとりの後、彼女は私を玄関へと迎い入れた。 「それじゃ、とりあえず中に入ってください」 勧められるがままに、私は綺麗に整頓された玄関に足を踏み入れた。 ガチャリ。ジャラジャラ。 と、施錠音がして後ろを振り向くと、当然のことながら田中キリエが鍵を閉めているところだった。ご丁寧にチェーンロックまでつけている。 私なんかは普段、自宅に居る時は鍵を閉めないタチなので、そこのところはやはり女の子なんだな、と感心した。 「こっちです」 と、案内された彼女の自室は、私の想像と違わない、いかにも女の子らしい部屋だった。 なんか、全体的にピンクっぽい。 カーテンも絨毯もベッドも全部ピンク色だ。彼女には悪いが、長時間居ると目が疲れそうだな、と思った。 部屋の中央に丸テーブルとクッションが置いてあったので、とりあえずそこに腰を下ろす。 「適当にくつろいでてください。私、お茶持ってくるんで」 田中キリエはそう言って、部屋を出て行こうとする。 「そんな。そこまでお気遣いしなくてもいいですよ」 と、一応遠慮してみるが、やはり田中キリエはお茶を用意しに出て行ってしまった。 急に所在無げになってしまったので、とりあえずキョロキョロと部屋を見渡してみることにした。 そういえば、女の子の部屋に入るのは初めてだ。 妹を女性としてカウントするならば話は別だが、彼女の部屋に入ったのだってもう十数年も前だし、初めてと言っても過言ではないだろう。 114 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 50 13 ID +7NZkhJf やはり少し緊張するな、と急にそわそわし始めてしまった。 家内の様子からして、どうやら田中キリエの親は不在なようだ。 ということは、ひとつ屋根の下に男女がふたりきりということになる。 そういうシチュエーションにいかがわしい妄想を抱いてしまうのが男の性なのだが、生憎私はまだ彼女の恋人ではない。今日はそういう事には至らないだろう。 ガチャリ。 と、再び施錠音がして、私は反射的にドアを見た。 「お待たせしました」 そう言いながら、田中キリエがお茶をお盆の上に乗せて持ってきた。 いや、それよりも。 私は思った。 なぜ、彼女は部屋の鍵を閉めたのだろうか。 この家には私と彼女しか居ないのだから、部屋の鍵まで閉める必要性はあまり感じられない。それなのに、何故わざわざ施錠をしたのか。 しかし私は、多少不思議には感じたものの、いつもの癖なのかな、と大して気にとめなかった。 田中キリエはお盆を丸テーブルの上に乗せて、カップにお茶を注いだ。 匂いと色からして、それが紅茶であることがわかった。 「お砂糖はどうします」 「じゃあ、少し」 シュガーポットから砂糖をひとさじ掬い、カップの中へ入れた。 そして、私と向かい合うようにして彼女もクッションの上に腰を下ろす。 「それにしても、びっくりしちゃったよ」 田中キリエが言った。 「いきなり鳥島くんが訪ねてくるんだもん。前もって言ってくれれば、もっと準備とか出来たのに」 「すいません。事前に連絡もなく突然訪ねてしまって。なるべく早く帰るようにするんで」 「そんな、いいよいいよ気にしなくて」 田中キリエはバタバタと手を振る。 「私の両親、共働きだからいつも帰ってくるの遅いし、時間のこととかは全然気にしなくて大丈夫だから」 「そうなんですか。それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」 「うん」 彼女がニコニコ顔で頷いた。 そこで会話が途切れてしまったので、今度は私から切り出してみることにする。 ひとつ気になることがあった。 「ところで、田中さん。ひとつ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」 「ん?何かな?」 「さっきから後ろ手隠している物は、何ですか?」 115 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 50 53 ID +7NZkhJf 「後ろ手に?」 彼女は首をかしげる。 「別に、何も隠してないけど……」 「あれ?でも今確かに――」 「それよりもっ!」 田中キリエは強引に話題を変えた。 「鳥島くんは今日なんで私の家に来たのかな?何か、用があって来たんでしょう?」 「あっ」 そこで私は、自分が肝心の本題を話していなかったことに気付いた。本題を先に話さないなんて、話しの順序としては最悪だろう。 「すいません。言われてみれば言ってませんでしたね」 私は苦笑し、頭をかいた。 「今日は、田中さんに告白しにきたんですよ」 「へっ?」 「あっ」 やべっ。つい、話しの流れで言ってしまった。もっとそれらしい雰囲気を出してから言い出そうと思っていたのに。 まあ、仕方がないか。 せっかくなので、私はそのまま続けることにした。 「あれから――ずっと考えていたんですよ」 私は紅茶を飲んで、舌を湿らせた。 「私が田中さんの告白を断ったのは正しかったのかってことを。ずっとずっと悩んでいました。そして、わかったんです。結局は私のエゴに過ぎなかったと」 田中キリエは黙って聞いている。 「要は、私は田中さんを傷つけるのが恐かったんです。田中さんは知らないでしょうが、私は結構、不完全な人間なんですよ。もし付き合えば、絶対にあなたを傷つけることが私にはわかっていた」 即興にしては中々の滑り出しだな、と私は思った。意外と演説上手な自分に驚く。 「けれど、結局それはただの逃避でしかない。私には田中さんと付き合っていけるわけがないと、自分勝手な理論を振りかざして、あなたを拒絶した。でも私は、田中さんの気持ちをこれっぽっちも考えていなかったことに気付いたんです 「告白というのはそれなりに勇気のいる行動だと思います。田中さんだって、何日も何日も想い続けて、漸くそれに至った筈です。私は、仮に断るにしても、そういう相手の想いを考慮してから答えを出すのが誠実だと思いました。 「それから、今度は田中さんの気持ちを考慮に入れてから、考えてみたんです。そして、答えが出ました。だから今、私はあなたにあの時の告白の返事をします。 「田中さん――よかったら私とお付き合いしていただけませんか?」 そうして、私は口を閉ざした。 116 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 51 26 ID +7NZkhJf 完璧だ。まずそう思った。 脳内では、私の演説を聞いた観客が総立ちになって喝采をおくっている。 多少キザっぽくなってしまったが、そこはご愛敬ということでいいだろう。 そんな充足感に包まれながら、私はしたり顔で彼女を見た。 「ひっく……えぐ……っえぐ」 泣いていた。 ええー。そこで、泣いちゃう? 想定外の出来事に混乱してしまう。 結構それらしく言えたはずなのだけれど……。 「あのー。もしかして不快でした?」 耐え切れなくなった私は、直接聞いてみることにした。 すると、田中キリエはぶんぶんとかぶりを振った。 「ちっ、が……ひっく……違うの、ただ……私嬉しくて」 彼女は嗚咽混じりでそう言った。 なんだよ、紛らしいな。 私はイラついた目で彼女を見た。 田中キリエは零れ落ちる涙を手で拭いながら、静かに泣いている。 彼女の物言いからして、どうやら私の告白は成功したみたいだし、これで晴れて私は田中キリエの恋人になったというわけか。 こういう時は彼氏らしく宥めてやるのが正解なのだろうか?無言で抱きしめてやったりしたらカッコイイかもしれない。 なんて考えていると、いつの間にか田中キリエは泣き止んでいた。 「あの……それじゃあ、これからよろしくお願いします」 と、彼女は深々とお辞儀した。 「いえいえ、こちらこそ」 なんとなく、こちらもお辞儀で返す。 こうして、私の告白は見事成功し、ここに一組のカップルが成立したのであった。 それから他愛の無い世間話を少しして、私は彼女の家を出た。 田中キリエはわざわざマンションの前まで付き添ってくれて、私の姿が見えなくなるまで手を振っていた。 駅のホーム。 私は電車を待つ列の最後尾に立って、ぼんやりと今日のことを思い返していた。 妙な達成感が胸の中にあった。 これで私は、めでたいことに、彼女いない歴イコール年齢じゃなくなったのだ。思うものもあるだろう。なんだか、男の階段をひとつ登った気がした。 電車が到着し、人々は車内に乗り込んでいく。私も同じように乗り込んだ。 その時になって思いだした。 ――そういえば。 私は部屋での田中キリエの姿を思い浮かべる。 どうして彼女は、私が帰るまでの間ずっと、金づちなんかを隠し持っていたのだろう? 117 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 51 57 ID +7NZkhJf 住んでいる街の最寄り駅に着いた時には、時刻はもう既に九時を通り越していた。 帰宅部の私は普段、こんなに遅くまで出歩かない。 斎藤ヨシヱと会った日だって、せいぜい七時前には帰宅していた。 なので、こんな遅くに道を歩くのは滅多にない。ちょっと新鮮な感じがする。 私は自宅を目指して歩き始めた。 寒さから守るようにポケットに手を入れ、空気中に残留する白い息を顔で受け止めながら、冷たい路地を歩いた。 いつの間にか、ひとりになっている事に気づく。 さっきまでは、何人かがぽつぽつと周りで一緒に歩いていたのだが、目的地に着いたのか、道中で道を曲がってしまったのか、とにかく今はもう消えてしまっていた。 コツコツ、と自身の歩く靴音しか、周囲には聞こえない。街灯の少ない路地なので、辺りはまるで暗幕を張ったかのように暗かった。 そんな闇の中だ。 二個先の街灯の下。まるでスポットライトのように照らし出されている人物を、私の目が捉えた。 目を細めてみる。 その人物は、大きい青のスポーツバックを肩に背負い、背筋をしゃんと伸ばし、毅然とした態度で前へ前へと歩を進めていた。 髪型は短めのポニーテールで、身長はやや高め。後ろ姿でもわかる、その凛とした態度には、どこか惹かれるものがあった。 その背中には見覚えがある。 私はたまらず駆け出していた。 「リンちゃんっ」 その人物の名前を呼びながら、小走りで彼女の横に並んだ。 暗闇でもしっかりとわかる、その整った顔立ちの少女は、間違いなく私の実の妹である鳥島リンだった。 「奇遇だね、帰り道が一緒になるなんて。リンちゃんは部活の帰り?」 気さくな感じで談話を始めてみるが、妹は刹那でも私を見ようとはしなかった。それもいつものことなので、気にしないようにする。 「部活は、確かバレーボールだったよね?母さんから聞いたよ。大変だね、こんな遅くまで練習だなんて。帰宅部の僕からしたら考えられないな」 妹は何も言わない。私のことなど見ない。 118 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 52 29 ID +7NZkhJf 「でも、気をつけなくちゃダメだよ。この辺はそんなに物騒でもないけど、リンちゃんは可愛いからね、変な人に目をつけられるかもしれないし。そうだ。なんなら僕が送り迎えしようか?」 妹は何も言わない。 「あー……」 会話のキャッチボールは全く成立しなかった。 これじゃあ、まるで壁に向かってボールを投げているようなものだ。しかも、壁は壁でもゼリーの壁だ。ボールを投げても、それが私の元に返ってくることは無い。 妹はまるで私が居ないかのように、黙々と自宅を目指した。 彼女のその態度に、突然怖くなる。 妹と接していると、本当に私はこの世に居るのだろうかと奇妙な不安に陥るのだ。 無論、そんなのは馬鹿げた幻想だ。そうわかっているのに、なぜかそれを一笑することが出来ない。 額には、ぽつぽつと脂汗が浮かび始めていた。 何か、何か話をしないと。 私は何かに急かされるように、とにかく口を開いてみる。 「あっ、あのさ」 けれど、何か話のネタを考えていた訳ではない。焦った私の口は、取り繕うように今日のことを喋りだしていた。 「そっ、そういえば今日、遂に僕に彼女が出来たんだよっ。その人は、田中さんっていうちっちゃい眼鏡の人なんだけど――」 しどろもどろになりながら、そうまくし立てていると、ドサッと何かが落ちた音がした。 ふと隣を見ると、妹がいつの間にか消えていたことに気付いた。 視線をさらに後ろにずらす。 妹は私の数歩後ろで、呆けたように私を見ていた。目の焦点が合っておらず、持っていたスポーツバックは地面に転がっている。 「今……なんて……」 妹は譫言のように呟いた。 「なんて言ったの……兄さん?」 兄さん。 久しぶりに呼ばれた古称に、胸が震えた。 妹から話し掛けてもらうのは、もう十数年ぶりくらいだった。それに加え、再び兄さんと呼んでもらえるなんて。 歓喜を隠しきれずに、思わずわなわなと身体が震えてしまう。 「なんて言ったの、兄さん?」 今度は幾分かはっきりした声。 冷静さを取り戻したのか、彼女の目はしっかりと私を見据えていた。 このまま、ずっと兄さんと呼ばれていたい衝動に駆られる。妹の問に答えるのを躊躇ってしまう。けれど、それを無視するわけにもいかない。 119 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14 53 03 ID +7NZkhJf 私は、緩む頬を引き締めてから言った。 「だから、今日、僕に田中キリエさんっていう恋人が出来たんだよ」 言い終わったのと、妹が口を開くのはほぼ同時だった。 「別れてっ!」 唐突に叫んだ彼女のその迫力に、思わずたじろいだ。 妹は私の近くまで歩み寄ってくると、再び言う。 「今の話が本当なら、すぐに別れてっ!」 訳がわからなかった。 どうして、妹は私に別れろと言うのだろう。別に祝福されるとも思っていなかったが、いきなりそういう事を言われるとも思っていなかった。 ――もしや。 私の頭の中に、愚鈍な考えが浮かぶ。 もしかして、田中キリエに嫉妬してるのかしら。と、そんなふざけた幻想を抱いた。 しかし、そのくだらない幻想は、次に発せられた妹の言葉によって、一瞬で砕かれた。 「兄さんみたいな人間が、誰かと付き合えるはずがないじゃない」 その言葉を聞いた途端、ニヤついていた顔は一瞬で凍り付き、さっきまでの幸福感が急速に萎んでいった。 そんな私に構わず、妹は続ける。 「兄さんだって薄々気づいているんでしょう?自分が所謂“普通”じゃないって、他の人からは一線を画した場所に居るってことを」 私は何も言えない。 「彼女さんのことを想うのなら、今すぐに別れて。兄さんはきっと、いえ絶対、彼女のことを不幸にするわ」 私は何も言えない。 「だって、兄さんは――」 「そんな」 妹の言葉を遮って、私は言う。 「そんな――まるで僕のことを、化け物みたいに言わないでくれよ」 「――ッ」 妹は何かを言いかけたが、やがてその口を閉ざした。 二人の間に気まずい沈黙が流れる。 妹は、私のことを哀れむような、恐れるような、何とも形容しがたい複雑な表情をしていた。 「兄さんには、無理よ」 そう言い残して、妹は走り出した。 私は小さくなっていく彼女の姿を見つめていた。 そして、見えなくなった。 私はしばらくの間、動く気になれず、その場に立ち尽くしていた。 それから、どのくらいたったのかはわからない。腕時計を見る気にもなれなかった。 「帰ろう」 ひとり呟いてから、地面に落ちたままのスポーツバックを拾い上げ、私はゆっくりと、家に着くのを躊躇うように、ゆっくりと歩いて行った。
https://w.atwiki.jp/v12multicharger/pages/9.html
V12マルチチャージャーでジャンプスタートできる車 V12マルチチャージャーの基本ガイドライン ★12Vエンジン ★ガソリン車輌は排気量4000ccまで ★ディーゼル車輌は排気量2500ccまで 普通乗用車、軽自動車、バイクなどのジャンプスタートに使えますが、 トラックやボート、4000ccを超える車には使えません。 上の条件を満たしていて、本体を正常に接続・充電されていても、 車輌をジャンプスタートできない場合があります。 ■バッテリーが酷く劣化してしまっている・故障している ■車輌のコンプレッサーが故障している ■バッテリーの接続端子が錆びている・劣化している ■その他車輌に致命的な故障がある場合 3~5回エンジン始動を試してもエンジンが掛からない場合は 接続の確認、本体の充電が十分か確認、 上記の故障、その他車の故障が無いかご確認ください。 >>V12マルチチャージャーのお問い合わせ・ご注文は公式ホームページで
https://w.atwiki.jp/10chigi/pages/18.html
_________ / 'r r.r.r.i / | | | | | / u .ノ.ノ.ノノノ ハ_ノ ヽ、__ / /ノ / (●)(● ) .( l ヽー―ー-、 / .(__人___) ム イ r ヽ ./ / ヽ`⌒´ | .l / 、 l / / 八_ 、__ /l | ,' l l . / ,' ヽ| | ノ ハ l / .l ∧ | レ' ノ l / l ノ ヽ | | ノ } ∧ / ,〆 ヘ l , ' l ヽ、_,ノ'´ ヘ .l / ノ ', | / ,' ト、 ノ ノ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ な、なんとか・・・・まさか、マンホールに落ちた先が【異世界】だったなんて…… ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 白くて長い現代日本人。 バイト帰りにマンホールの穴に落ちて異世界グンマー王国にやって来る。 元の世界に帰ることを夢見て古明地家にて居候中。 やらない夫自身は貧弱一般人の為、いい装備を頼まないとグンマーの獣たちや指名手配犯に殺されてしまうため金の大概の使い道は装備品である。 最初はグンマーの常識に振り回されつつも、その常識に慣れつつある。 ステータス 体力:50 装備品 【蒼天】:剣・ダメージ+49 【ソリッドアーマー】:ダメージ-40 ※即死耐性あり 技 アローレイン:弓専用、相手に最大五回攻撃、二発は必ず当たる 武器攻撃力-5 針串刺し:槍専用、敵の体力が一定値以下・ボス以外の時のみ発動可能。敵を一撃で倒すが、失敗すると受けるダメージ+50 三連槍:槍専用、相手に三回連続で攻撃。武器攻撃力-10 不動崩し:槍専用、相手を怯ませた上、ダメージ補正を【+5】増加する。攻撃の際、武器攻撃力-15 一回の戦闘に一発のみ 刹那五月雨切り・改:剣専用、相手に最大五回連続で攻撃、絶対に二回は命中する。武器攻撃力-5 トマホークブーメラン:斧専用、相手に二回の連続攻撃、武器攻撃力-5 弾幕のロールシャッハ:弓専用・相手全体に【70】の固定ダメージを与える。 技術 【みね打ち】:オートモード時発動、敵を自動的に捕縛する。捕縛にすると【持ち帰り】【捌く】【逃がす】の三つから選択することになり、持ち帰るとプレゼントアイテムになり、捌くと死骸になる。尚、持ち帰れる敵は一回の冒険につき一体のみである。 【解体技術】:みね打ちで倒した敵を捌く場合、売るのに一番適した状態にする。この技術がある場合、ドロップアイテムの入手確率が上昇する。 サポートブースター:協力者の能力が【+1】される。重複可能 現在3個 オートポーション:ダメージを食らうと自動的に傷薬を使用する。(ON・OFF可) 後の先:連続攻撃系の最低命中率が【二回】になる。 持ち物 【お金】:9400GD 【所持品】 【傷薬】:体力を【50】回復する 残り36個 【蜂蜜】:あま~い、体力を【50】 残り1個 【牛乳】:体力が【20】回復する、次のターン武器攻撃力【+2】される。 残り2個 【たべのこし】:体力が【1】回復する、なくならない 残り1個 食屍人の肉】:臭い・・・・一応食べると【50】回復するが…… 残り1個 【ハーブティー】:プレゼントアイテム、香り豊かな西洋茶 体力が【10】回復し、毒を治療する 残り2個 【ココア】:プレゼントアイテム、とても甘い飲み物 体力が【20】回復する 残り1個 【保存食】:プレゼントアイテム、所謂携帯食料日持ちがとても長い 体力が【50】回復し、そのターン受けるダメージ-3 残り1個 【ニクミーの肉料理】:体力が【全回復】する、次のターン、武器攻撃力が【2倍】になる 残り2個 【油】:相手全員を【油まみれ】にする、攻撃アイテムの威力が二倍になる 残り7個 【石油】:相手全員を【石油まみれ】にする、攻撃アイテムの威力が三倍になる 残り5個 【修理パッチ】:鎧の破損を修復する。全壊すると修復不可 残り4個 【反魂香】:死亡時自動的に発動、体力全回復で復活 他にも使用用途があるらしい…… 残り1個 【折り畳み式シールド】:戦闘中、このアイテムを使用すると相手の攻撃を一回だけ半減出来る 【残り10回】 【爆弾札】:相手単体に【15】の固定ダメージを与える、特定条件で追加ダメージあり 残り1個 【マハラギオンストーン】:相手全体に【20】の固定ダメージを与える、特定条件で追加ダメージ 残り3個 【ラインボム】:相手全体に【30】の固定ダメージを与える、特定条件で追加ダメージ 残り2個 【爆導索】:相手全体に【50】の固定ダメージ、特定条件下で追加ダメージ 残り5個 【マカラの鏡】:相手の攻撃を一度だけ反射する、特殊攻撃に対応 残り3個 【不思議な球体】:??? 何に使えるのかは不明 残り2個 【湿り気スカーフ】:敵が自爆する際に自動的に発動、自爆のダメージを0にする。 残り3個 【エルダーサイン】:特定の敵を大幅に弱体化させる道具 残り1個 【エクスカリバーⅡ】:剣・ダメージ+35 売却価格:【9000GD】 残り1個 【ブラスターテックランサー】:槍・攻撃力+39 売却価格:【12000GD】 【ファイナルゲッタートマホーク】:ダメージ+40 売却価格:【15000GD】 【フレンドドリンク】:プレゼントアイテム、仲良くなる薬、効能は不明 売却価格:【5000GD】 残り2個 【惚れ薬】:プレゼントアイテム、異性に使える薬 同性には使えないんだとか 売却不可 【大きくなる薬】:マスコットとか、成長途上の子に使える薬とかなんとか…… 売却価格:【10GD】 残り2個 【先生の教科書】:狩りについて適切に纏められた素晴らしい教科書、だけど先生って誰? 売却価格:【2000GD】 残り2個 【超合金】:固い!固すぎる! その為鍛冶には使えません 売却価格:【2000GD】 残り1個 【触手】:なんかウネウネしてる…… 売却価格:【5000GD】
https://w.atwiki.jp/bitacolle7/pages/105.html
名称:ヒューマノイド・エンジン レアリティ:☆3 属性 火 一覧番号 0075 入手先 入手先1:進化 トイドロイド入手先2:入手先3: レベル 1(50) HP 303(819) 攻撃力 45(180) 治癒力 14(52) コスト 3 売却価格 ??? 進化必要素材 進化先 必殺技:ファイアブロー 必要ターン数 15(11) 効果(Lv1) 敵単体に、火属性の1000ダメージを与える。 効果(Max) 敵単体に、火属性の1500ダメージを与える。 リーダースキル:先制発砲 ラウンド開始時、敵全体に火属性の80ダメージを与える。